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日本の家は使い捨て?

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通勤中、よくFreakonomicsPodcastを聴きます。こないだ日本の住宅事情の話をやっていたので、要旨を記事にしてみました。

日本の家はなぜ使い捨てなのか

Why Are Japanese Homes Disposable?

建築天国
日本の建設関連の雇用者数は、人口比でアメリカの2.1倍。人口あたりの建築士数はアメリカの3.8倍で、世界一多い。そして、一軒家の新築需要は他国ではありえないくらい巨大だ。20年も不況が続いているのに、そして、急激に人口が減少しているのに、なぜ日本では新築が多いのか。

寿命が短い家
新築が多いということはつまり、解体される家も多いということだ。日本にある家のうち、半数は築後38年以内に解体される(アメリカの場合はおよそ100年)。その主な理由は、家の資産価値の下落だ。日本では、家の資産価値はおよそ30年でゼロになる。なぜこれほど短い期間で価値が下がるのか。

新し物好きの日本人
日本人は新しいものが好きだ。伊勢神宮は日本で最も伝統的な神社だが、20年ごとに建て替えられる。日本人は、新しいものには穢れがない(古いものには穢れがある)というメンタリティを持っていると言える。

地震大国
日本は地震大国だ。これまでに何度も巨大地震に襲われ、家屋の倒壊を目の当たりにしてきた。よって、建築物は壊れやすいものだ、永遠に続く物などない、という諦観が日本人に定着した。
そして、耐震性基準の改訂。建築法に耐震性基準が取り入れられた後、1950年・1971年・1981年・2000年と改訂が繰り返された。それぞれ、福井地震、十勝沖地震、宮城沖地震阪神淡路大震災を受けてのことだ。新らしい基準が設けられると、それまでに建てられた家は危険だということになる。危険な建物は価値を失い、壊され、最新の耐震性能を持った家が建てられる。

マーケティング手法
ハウスメーカーは耐震性技術の高さを盛んに宣伝する。安心を売っているといえば聞こえがいいが、逆にいえば顧客に地震の恐怖を植え付けているようなものだ。結果、耐震性能に問題のない建物ですら危険だと信じ込む顧客が生まれる。

悪循環
日本には家の手入れをするインセンティブがない。20~30年で資産価値がゼロになり、自分が建てた家も、次に同じ場所に住む人に解体されることが明らかだからだ。メンテナンスをしないから、本来であればもっと長期に渡って住み続けられる家が、本当に20~30年で使えなくなってしまう。
ダメになった家を取り壊す→新築する→どうせ将来解体されるのだから、手入れをしない→短期間で家がダメになる→取り壊す...。この悪循環だ。

不況の原因にも
このように、家を実質的に使い捨てにするというやり方は、非常に無駄が大きい。アメリカやヨーロッパはもちろん、他のアジアの国でも、家は資産だという認識が一般的だ。メンテナンスをしっかりすれば、購入した額よりも高値で売れる。日本では、家を買っても、または新築しても、その価値は短期間でが下がる。建物が投資の対象にならないため、富の上に富を築くことができない。長く続く日本の不況には、もしかしたらこんなところに原因があったのかもしれない。


思ったこと

日本の住宅建築の事情が不況の一因かもしれないという話。逆にいうと「住宅を購入しても、将来高く売れるという期待があれば変に支出を切り詰めたりしない。だから消費が増えて景気の好転につながりやすい」ということでしょうか。確かにそうなのかもなーと思いますけど、家が長持ちするということは、新築工事が減るということ。建設業界の反対があれば、そう簡単に政策転換はできないよね。

なんて思っていたら、すでに長期優良住宅制度というのが2009年から施行されていたらしい。この会社のウェブサイトがすごく分かりやすい。消費財ではなく、資産としての家を建てましょうって、Podcastの議論にそのまま応答するような内容になっていて、感動すら覚えました。でも、状況はそう簡単に変わっていないのかもしれないですね。長期優良住宅制度の認定取得率って、どれくらいあるんだろう?


この記事で使った写真:paper houses (CC BY 2.0)